取り組みの背景
コオロギが注目されている背景には、世界が抱える食料と環境の問題があります。人口増加に伴う食料不足の問題と、食料を生産する上で起こる環境負荷の問題です。コオロギは、畜肉(牛豚)に比べて、温室効果ガス・水・飼料・飼育期間などの環境負荷が少ないため、国連も「貴重なたんぱく源」としてコオロギフードを推奨しています。また、飼料も穀物ではなく、廃棄された食材を活用できるため、食品ロス削減にもつながります。
コオロギ食のメリット
コオロギは、地球上に豊富に生息しており、年間を通して早く成長し、飼育が容易です。また、雑食であるためエサへの制限が少なく、飼料効率が高いです。産卵されてから出荷できる成虫に仕上がるまでには約35日程度と発育日数が短く、養殖環境の温度と湿度を一定に管理することで年間を通して安定的に生産できます。
IoTを加味した取り組み内容
自動化の範囲
システム化するにあたり、コオロギの孵化から、出荷までを自動化しております。従来では毎日給水、給餌、清掃を行っていましたが、本取り組みではその三点を自動化しております。
従来 | IoT化 | |
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給水 | 乾燥の度合いを見て、霧吹きで給水していた。 | 水分量センサをつけ、規定値を下回った場合に自動給水します。 |
給餌 | 水に濡れない分量で給餌を行っていた。 また餌に埋もれて窒息しないようにしていた。 |
あらかじめ設定した時間に、設定した分量を給餌。 エサが水に濡れる心配もありません。 また幼虫であれば給餌の前にエアーを吹き、コオロギを退避させます。 |
清掃 | コオロギを別の生育箱に移し、清掃を行っていた。 | 二層構造にすることで円滑に清掃を実施。ワイパーからエアーを吹き、清掃を行います。 |
制御装置
ユニットの作成と出力について
給水ユニット、給餌ユニット、フン清掃ユニットは3DCADにてモデリングし、3Dプリンタで出力しております。
内部閲覧機能
内部を閲覧できるようカメラを搭載。これにより生育具合をリアルタイムで閲覧できます。
コオロギの生育状況に合わせたフェイズを設定
本システムではフェイズを5つに分け、生育管理することを実現しています。生長度合いに合わせフェイズを切換え、常に最適な生育を行います。
給餌設定や清掃設定で時刻を設定することで毎日設定した時間に実行できます。
管理画面
生育管理画面ではコテージ内の気温・湿度と、生育箱の気温・湿度を閲覧できます。また現在の生育箱のフェイズにあわせ、自動でフェイズに分けて表示を行います。なにも操作しなければ自動で次のフェイズに移行しますが、生育が遅れている場合には該当の生育箱を選択し、一つ前のフェイズへ差し戻す機能も搭載しています。
コオロギ養殖の展望
コオロギを食材として使用することは、持続可能性、栄養価、および環境への影響の観点から、さらに拡大する市場の一つと考えております。給水、給餌、清掃を自動化することで、生産コストの削減やスケーラビリティの向上、さらには一貫した品質の確保など、多くのメリットが期待されます。今後このシステムを発展途上国にも支援し、飢餓で苦しむことがなく、新たに職と食を生み出せる社会を作っていくよう展開していきます。